2014年7月12日

下の名前

 馬鹿にしたように長谷部さんは笑っていた。ってか、馬鹿にされていた。僕もさすがに腹が立ったよ?
「一人だけ、下の名前で読んでる」
「へぇ・・・・・・。彼女?」
 急に真面目な顔になって長谷部さんは訊いてきた。表情がコロコロ変わるな、この人。怪人二十面相さんですか?
「だったら、童貞じゃないだろ?」
「へぇ、そこは否定できないんだ」
「『女子の下の名前を呼び捨てにしたことがない、チキンな童貞くん』の中で、否定できるのは女子の下の名前を呼び捨てにしたことがない』の部分だけだよ。悲しいことに、一番否定したい『チキンな童貞くん』が否定できない」

2014年6月29日

冷ややかな気持ち

 出てこない言葉を埋めるために、俺は必死に笑顔を作った。安心して下さい。という気持ちが伝わってくれれば良いな、なんて期待して。
「俺の娘には、これを渡してくれ」
 そう言って先生は、丸くて白い球を俺に手渡した。俺はそれが何か分からなかった。でも、
「言霊ですね」
 と言う茜は、これが何かを分かっているようだった。
「任せて下さい」
 何か分からなかったけど、取り敢えず俺はそう答えた。
「おう。任せたぜ」
 それが、遊馬先生の最後の言葉になった。
動かなくなった遊馬先生を、俺は冷ややかな気持ちで見つめていた。

2014年6月12日

性欲っていうもの

 家に帰ると、俺はすぐに自分の部屋に閉じ籠もった。両親は共働きで、夜遅くまで帰ってこない。だから、この帰ってから、親が帰ってくるまでの間が、俺の自由時間。何をやっても良いわけではないけど、何をやっても叱られない時間。

 多分、多くの人が望んで、ほとんどの人が得られないであろう幸福を満喫する。

「またエロ本とか読んで時間を無駄にするのか?」

 とか、架が言ってくる。

「人間は性欲っていうものを神様に授かっているんだよ。それを大切にするのの何が悪い?」

2014年5月31日

牛鬼の殻

 プシュっと言う音に向かって牛鬼は体当たりし、直撃した。

 さすがに、牛鬼の殻は壊せなかったけど、牛鬼は空中でバランスを崩して、地面に着地した。

 そうして牛鬼がひるんでいる間に、俺はバイクの所まで駆けつける。

 バイクのアクセルを入れる――牛鬼が起き上がる。

 バイクの速度が上がっていく――牛鬼がまた俺に向かって跳ぼうとする。

 バイクは直ぐにトップスピードに入る――架の風の渦が牛鬼を押さえ込む。

 バイクを少女の近くで傾ける――架の風の渦を弾いて牛鬼が跳ぶ。

2014年5月11日

説教

「ご、ごめん」

 和奏の言っていることは正論過ぎて、何も言い返せなかった。ただただ、謝ることしか俺にはできない。

「それに、嘘ついたよね?今。ふざけないで!あんた、この仕事なんだと思ってんの?」

「すみませんでした」

 完全に、上司に怒られる部下の構造だ。まぁ、和奏の方が妖怪退治に於いては圧倒的に先輩株だから、上司に怒られる部下であることには変わりはないんだけど。

「それにあんた、今朝さぁ・・・・・・・。それに、そもそも化け猫が出たときだって・・・・・・」

 延々と説教は続いていく。

2014年4月29日

明日

明日、又明日、又その明日。

「そうやって先延ばしにして、現実から逃げて、それを指摘したら機嫌を悪くして、どうしようもないクズだな、君は」
 僕のHPが、Heart Point が、一気に削られた。多分、ステータスバーが僕の上に浮かんでいるなら、間違いなく赤く染まっている。ってか、今ので普通に瀕死になって良かった。目の前が真っ白になれば、この場から逃げれたのに・・・。
「・・・」
 僕にできるのは、沈黙。もう、これしかない。

2014年4月15日

伝言

 飛鳥先生に頼んだ伝言を一応は聞いてくれていたようだ。そのことに少し感動しつつ、そうだよ、と答えた。
「じゃあ、ここで読むと邪魔だから、ブースで読む」
 と言って本を片付け、弁当を広げる葉月さんに言う。
「いや、できれば一緒に読みたい」
 そういって、僕はぼろぼろの『かもめのジョナサン』を取り出す。僕はこの話が好きで、少なくとも半年に1回は読んでいる。もう10回以上通読された文庫本だ。
「同じ本を、一緒に?」
 露骨に嫌そうな顔をする葉月さん。でも僕が、「あれ?他の人とは無関係じゃなかったの?」と言うと、葉月さんは渋々了承した。夕食の時、ファミレスで一緒に読むという約束になった。

2014年3月31日

高校の選び方

高校の選び方も、「近い高校の中で一番偏差値が高かったから」だった。高校が遠いことでのタイムロスと学校に対する意識が違うことによる弊害が調度良かった学校が、ここ北高だったのだろう。似たような考え方で学校を選び、それぞれが違うタイプの知識をつけながらも二次元という共通の趣味を持ち、その癖、同じ様な考え方はしない僕らははっきり言って変な二人組だろう。客観的に見たら、なんでこいつらが仲良いのって感じだろう。まあ、博人はクラスでは浮いているからよく言われるのは「なんであいつと仲が良いの?」だけど。

2014年3月15日

整理整頓

何故、部屋を片付けるのだろうか?ずっと僕は疑問に思ってきた。幼稚園の時から、両親に自室を掃除しろと言われ続けて来た。すぐにまた汚れるにも関わらずだ。

学校でも、汚したらちゃんと掃除しろよと教えられる。何故なのだろう?服だって、上着なら理解できるけど、下着まで畳むような奴もいるものだ。

みんなあんたの下着とかを見ていないよと、教えてあげたくなってしまう。自分しかいない自分の部屋、誰にも見られない下着。そんなものを掃除する必要あるのか?

2014年2月24日

国連

国連とか言う組織が調子に乗ってひっどい計算結果を叩きだしやがった。なんでも、19歳になるまでに頑張らなかった人間を放置するのは危ないこと何だとさ。

彼らが言うには、そんな人間たちが与える恩恵よりも怠慢な奴らがこの世界にもたらす危険のほうが何倍もやばいんだそうだ。これじゃあまるでお邪魔虫だぜ?

そんなこんなで出た結論。19歳になるまでに全くもって何もしなかった奴は職業選択の権利がなくなり、何かやってた人たちには好きな仕事を選ばせるべきなんだとさ。